第44章
名誉と安全と、どちらが大切だろうか
身体と財産と、どちらが数えるほどあるだろうか
得ることと失うことと、どちらが憂うべきことだろうか
固執すればそれなりに消耗し
多く所有すると失う時も大きなものとなる
人並みで満足すれば欲深だと辱められることもなく
ほどほどで止めるならば危険なこともない
そうであれば長寿を保てる
(wonderer訳)
ここはおもに戦争について言っているのだと思います。
戦功を立てて勲章をもらうよりも、平和な暮らしのほうがいい。戦争に勝って多額の賠償金を得るよりも、一つしかない体を大事にしたい。財産を増やすことに夢中になるより、いまあるもので平穏に暮らしたい。そういう主張をしています。
また、何か(名誉?場合によっては正義でしょうか?)にこだわれば相応に精神を使うことになり、財産が多ければ失った時の損失も大きくなってしまうと言い、ここでも良いとされるものを否定的に見ています。
ほどほどにするのなら人から批判を受けることもないし、人からねたまれたりして危険な目に合うというようなことも少ないでしょう。そのような生き方をすれば長寿でいられる、と言っています。
戦争と果てしない欲望の否定をここで主張しています。また、無欲を主張しているのではなくて、ほどほどで満足するといいと主張しています。
ここでは、人を不幸にするとかいうのではなくて、自分にとって益にならないから戦争は必要ないと言いたいようです。戦争では武勲をたてることも多大な戦利品を得ることもできますが、死んでしまっては意味がないでしょう。
人の死は最大の不幸の一つだと言えますが、ここでは名誉や財産の否定することでそれから逃れられると言って、政治を批判的に見ています。
とくに説明するまでもないと思います。この章は読むだけで老子の考え方が理解できるのではないでしょうか。